2026/10/31 一級建築士 村山 創
結論
住まない家を
住宅ローンで買う話には、
ゼッタイに
手を出してはいけません。
住宅ローンやフラット35は、自分や家族が住む家を買うための融資です。住まずに人に貸す、民泊や事務所にするのは契約違反で、残りの全額を一括で返すよう求められることがあります。転勤などで住めなくなったときは、貸す前に返済中の金融機関に相談してください。いっぽう、手元のお金をNISAなどで運用するのは問題ありません。
住宅ローンは、なぜ金利が低いのか
住宅ローンは、本人や家族が住むための家に貸すお金です。暮らしの土台になる家なので、事業や投資のためのローンより低い金利で借りられ、住宅ローン控除で税金も戻ってきます。
この低い金利で投資用の家を買えば、家賃との差で得をするように見えます。だからこそ「住宅ローンで買って貸せばいい」という誘いがあとを絶ちません。けれども、それは住むことを条件に借りたお金を、条件と違う使い方をすることになります。
ゼッタイに手を出してはいけない使い方
住宅金融支援機構は、フラット35の「不適正利用」として、次のような例を挙げています。銀行の住宅ローンも、本人が住むことを条件にしているものがほとんどです。
- 自分は住まずに、人に貸す・民泊にする(投資のために家を買う)
- 店舗・事務所・旅館として使う
- 家と関係のない費用を上乗せして借りる(車の購入費など)
- カードローンなどの返済分を上乗せして借りる(いわゆる、おまとめ)
分かったときは
- ・残りのローンを一括で返すよう求められる
- ・警察へ通報される。関わった業者や金融機関も処分の対象になる
- ・損害賠償を求められることがある
業者に手続きをすべて任せていても、うその内容で借りれば、借りた本人が責任を問われます(住宅金融支援機構)。
実際に起きたこと
2018年、投資用のマンションをフラット35で買わせる不正が見つかり、大きな問題になりました。業者に「フラット35でも大丈夫」と勧められ、契約違反だと知らないまま買った人も多かったとされます。住宅金融支援機構は調査を行い、不正が分かった借り手には残りの一括返済を求めました。
一括で返せなければ、家を売って返すことになります。売った額がローンの残りに届かなければ、家を失ったうえに借金が残ります。
こんな誘いには、ゼッタイに乗らないでください
- ・フラット35は投資用の物件にも使える
- ・金融機関には「自分で住む」と言えばいい
- ・契約書を2通つくる。みんなやっている
- ・手続きは全部こちらでやるので、金融機関とは直接話さないで
- ・転勤になったら、売るより貸したほうが得
「みんなやっている」「ばれない」と言われても、損をするのは借りた本人です。どんなに得に見える話でも、ゼッタイに手を出してはいけません。
住宅金融支援機構の注意喚起の例を、言い換えて載せています。最後の1つはSNSなどで見かける誘いです。
してよいこと・いけないこと
| 場合 | 扱い |
|---|---|
| 自分は住まない家を、住宅ローンで買って貸す・民泊にする | できない契約違反。一括返済を求められる |
| 住んでいた家を、転勤などで住めなくなり貸す | 貸す前に相談返済中の金融機関に届け出る。その間は住宅ローン控除なし |
| 親や子など、親族が住む家を買う | できるフラット35は親族が住む家にも使える |
| 自分で住みながら、手元のお金をNISAなどで運用する | 問題ない自分のお金の使い方は自由 |
転勤などで、住めなくなったら
- 貸す前に、返済中の金融機関に相談する。住所が変わったら届け出が必要です。黙って貸すと、契約違反として一括返済を求められることがあります
- 家族全員が住まなくなると、住宅ローン控除は受けられません。その間は、控除に使う残高の証明書も届かなくなります
- 転勤なら、住まなくなる日までに税務署へ届出書を出しておく。戻って住んだ年から、残りの期間の控除を受け直せます
家族が住み続け、本人だけが単身赴任する場合は、引き続き住んでいる扱いになるのが一般的です。細かな扱いは、金融機関と税務署で確かめてください。
手元のお金を運用するのは、問題ありません
住宅ローンで借りたお金で家を買い、そこに住みながら、自分の貯金や毎月のお金をNISAなどで運用するのは自由です。住宅ローンの金利が運用の利回りより低ければ、繰上げ返済より運用を選ぶ人もいます(運用は元本が保証されません)。
たとえば、ZEHにして光熱費が下がった分を積み立てる方法もあります。ZEHにすると、35年でいくら違いますか?
気をつけたいのは、家の購入と関係のない費用を住宅ローンに上乗せして借り、それを運用に回すことです。これも「ゼッタイに手を出してはいけない使い方」にあたります。
この記事に関連する質問
親が住む家を、フラット35で買えますか?
買えます。フラット35は、申し込む本人だけでなく、親族が住む家にも使えます。使えないのは、本人も親族も住まずに、第三者に貸したり民泊にしたりする家です。
住んでいないことは、分かるものですか?
住宅金融支援機構は、融資のあとも定期的に利用状況を調べています。申込みの内容に気になる点があれば、本人に直接確かめるとしています。「ばれなければいい」という考えは危険です。
転勤で家を貸したら、住宅ローン控除はどうなりますか?
家族全員が住まなくなると、その間は住宅ローン控除を受けられません。転勤で住まなくなる場合は、住まなくなる日までに税務署へ届出書を出しておくと、戻って住んだ年から、残りの期間の控除を受け直せます。
住宅ローンを借りたまま、NISAで積み立ててもいいですか?
問題ありません。住宅ローンで借りたお金を家の購入に使い、自分の貯金や毎月のお金を運用するのは自由です。ただし、家の購入と関係のない費用を住宅ローンに上乗せして借り、それを運用に回すことはできません。
出典:住宅金融支援機構「【フラット35】の不適正利用について」「住所・氏名等の変更」「【フラット35】ご利用条件」、国税庁「質疑応答事例(住宅借入金等特別控除の再適用)」。ご自身の場合の扱いは、返済中の金融機関・税務署でお確かめください。