2026/10/25 一級建築士 村山 創
結論
内装のきれいさより先に、
「雨漏り」と「塩害」の跡を見ます。
沖縄の鉄筋コンクリート造は、雨水と塩分で鉄筋がさびることが、建物の寿命を左右します。内見では、屋上・ベランダの裏・天井のしみを見て、建築確認の日付と増築の有無を書類で確かめましょう。リフォーム済みで室内がきれいでも、屋上や外壁はそのままのことがあります。
内見で見るところ
沖縄に多い、鉄筋コンクリート造・陸屋根の一戸建てで、建築士が内見のときに見るところです。上から順に、外から中へ見ていくと見落としが減ります。
内見に持っていくもの
懐中電灯
押し入れの奥、天井や床下の点検口を照らす
スマホのカメラ
気になったところを撮っておき、あとで専門家に見せる
ビー玉
床に置いて、傾きを確かめる(スマホの水平器でも)
メジャー
冷蔵庫・洗濯機・家具の置き場所を測る
販売図面
間取りと実物が同じか、増築がないかを見比べる
雨の日や、大雨の次の日に見に行くと、雨漏りやしみが見つけやすくなります。
場所ごとのチェックリスト
1屋上
沖縄の陸屋根は、防水が切れると雨漏りに直結します。上がれるなら、必ず上がって見ましょう。
- 防水の表面に、ひび割れ・膨れ・剥がれがないか
- 水たまりが残っていないか。排水口(ドレン)に土や草が詰まっていないか
- 給水タンクと、それを載せる鉄の架台がさびていないか
- 防水をいつやり直したか(売主・不動産会社に聞く)
2外壁・ベランダ・庇
塩害(爆裂)がいちばん出やすいところです。見上げて、裏側までのぞきましょう。
- 外壁のひび割れと、そこから流れる茶色いさびのしみ
- ベランダの床の裏や庇の先で、コンクリートが浮いたり剥がれたりして、鉄筋が見えていないか
- 外壁塗装をいつやり直したか
3室内(天井・壁・押し入れ)
雨漏りと結露の跡は、天井と、ふだん目につかない奥に出ます。懐中電灯で照らして見ましょう。
- 天井や壁の上のほう、窓のまわりに、しみ・クロスの浮きやはがれがないか
- 押し入れ・クローゼットの奥や北側の部屋に、カビや結露の跡がないか
- 浴室の天井で、コンクリートや塗装が剥がれていないか(湿気で鉄筋がさびやすい)
- 床が傾いていないか(ビー玉を置いてみる)。ドアや引き戸が、きちんと開け閉めできるか
4窓・設備
取り替えに費用がかかるものです。年式と動きを確かめましょう。
- サッシが重くないか、さびていないか。台風のときのシャッターや雨戸があるか
- 給湯器(電気温水器・エコキュートなど)とエアコンの年式
- 水を出して、出方と色を見る(古い給水管は、さびで赤い水が出ることも)。排水の流れも
- 下水につながっているか、浄化槽か
5シロアリ
鉄筋コンクリート造でも、ドア枠や床などの木の部分はシロアリに食べられます。
- 木のドア枠・床・巾木を押して、ふかふかしないか。土の筋(蟻道)がないか
- 木造なら、床下の点検口から、土台や柱の様子も見る
- シロアリの予防や駆除を、いつしたか
6書類・敷地
見た目では分からない大切なことは、書類で確かめます。
- 建築確認の日付(1981年6月1日より前なら旧耐震)
- 図面・確認済証・検査済証・建設住宅性能評価書が残っているか
- 図面や登記と違う増築がないか(屋上や庭に、あとから部屋を足していないか)
- ハザードマップ(浸水・土砂災害・津波)と、敷地のまわりのがけや擁壁
沖縄で気をつけたい「塩害(爆裂)」
コンクリートの中の鉄筋がさびると、さびの分だけ膨らんで、まわりのコンクリートを内側から押し割ります。これが「爆裂」と呼ばれる傷みです。沖縄は潮風が強いうえに、1986年以前に建てられた建物では、塩分を含む海砂がコンクリートに使われていることがあり、海から離れた家でも起こります。
出やすいのは、ベランダの床の裏、庇の先、浴室の天井など、水がかかったり湿気がこもったりするところです。補修はできますが、範囲が広いと費用がかさみます。見つけたら、購入前に範囲と補修の費用を確かめておきましょう。
内見だけでは分からないこと
壁の中の鉄筋のさび、天井裏や床下、防水の下の傷みは、内見で見ただけでは分かりません。気になるところがあれば、専門家に確かめてもらいましょう。
- 既存住宅状況調査(インスペクション):建築士が、建物の傷みや雨漏りの跡を調べます。不動産会社は、仲介のときに調査をあっせんできるかを説明することになっています
- 既存住宅売買かし保険:インスペクションに合格すると付けられる保険で、次のメリットがあります
金利引下げの条件はフラット35の金利引下げ、何ポイント取れる?、旧耐震の物件の住宅ローン控除は旧耐震の物件は、買っても大丈夫?をご覧ください。保険の検査を頼める事業者は、住宅瑕疵担保責任保険協会の「かし保険を利用する登録事業者等の検索」で、保険の種類(売主が個人なら「個人間売買タイプ」)と「沖縄県」を選ぶと探せます。売主が不動産会社のときは、不動産会社が保険に入る「宅建業者販売タイプ」になるので、まず不動産会社に、保険を付けられるか聞いてみましょう。
- フラット35の適合証明の検査:フラット35を使うときは、建築士が現地で、基礎や外壁のひび割れ、雨漏りの跡などを確かめます。基準に合わないと借りられないので、早めに確かめておくと安心です(適合証明書は、どこで発行してもらえる?)
マンションの場合、屋上や外壁などの共用部分は管理組合が修繕します。長期修繕計画と修繕積立金の確かめ方は一戸建てとマンション、どちらを選べばいい?、新築と比べるなら新築と中古+リノベ、どちらがいい?、1981年より前の物件は旧耐震の物件は、買っても大丈夫?をご覧ください。
当事務所がお手伝いできること
購入を決める前に、販売図面や評価書をお送りいただければ、フラット35の金利引下げや住宅ローン控除が使えるかを、無料で事前に確認します。そのうえで、フラット35の適合証明の検査、住宅省エネルギー性能証明書の発行、リノベの検査を行います。どの物件・どの不動産会社とも利害のない、中立な立場でお手伝いします。
この記事に関連する質問
リフォーム済みの物件なら、安心ですか?
内装がきれいでも、屋上の防水・外壁・給水管などには手が入っていないことがあります。どこを、いつ工事したかを売主や不動産会社に聞き、工事の記録があればもらっておきましょう。とくに屋上の防水と外壁塗装の時期は、購入後の修繕費に大きく関わります。
雨漏りの跡があったら、買わないほうがいいですか?
跡があるだけで、すぐに買えないわけではありません。すでに直したのか、いまも続いているのかが大切です。直した場合は、いつ・どこを・どう直したかを確かめます。いまも続いているなら、原因と修理の費用を見込んだうえで判断し、価格の相談の材料にもなります。
塩害(爆裂)は、直せますか?
直せます。傷んだコンクリートを取り除き、鉄筋のさびを落としてさび止めをしてから、断面を補修するのが一般的です。範囲が広いと費用がかさむので、購入前に範囲を確かめておくと安心です。補修のあとも、外壁塗装と防水で水と塩分の入り込みを防ぐことが大切です。
売主や不動産会社には、何を聞けばいいですか?
屋上の防水と外壁塗装をいつやり直したか、雨漏りやシロアリの被害と修理の記録、増築や改築をしたことがあるか、図面・検査済証・建設住宅性能評価書が残っているかを聞きましょう。売主が雨漏りやシロアリなどの状況を書く「物件状況報告書(告知書)」があれば、内容を確かめてください。
マンションの内見でも、同じところを見ればいいですか?
室内の雨漏りやカビ、窓、設備、床の傾きは同じように見ます。屋上や外壁などの共用部分は管理組合が修繕するので、長期修繕計画の内容と修繕積立金の残高、滞納が多くないかを、管理会社から取り寄せた資料で確かめます。
※この記事は、内見のときに見るところの一般的な説明です。建物の状態は物件ごとに大きく異なり、内見だけで劣化の有無を判断することはできません。