2026/10/12 一級建築士 村山 創
結論
どちらがお得かは、
一概には言えません。
住む年数、働き方、家族の予定によって答えが変わるからです。賃貸には身軽さが、持ち家には性能を上げて光熱費を下げられる自由があります。大切なのは、あなたのライフスタイルに合わせて住まいを決めることです。
沖縄は、持ち家率が全国でいちばん低い
沖縄県の持ち家率
42.6%
全国でいちばん低い
(全国は60.9%)
新築3LDKの家賃(1か月)
11万円超
沖縄県内の平均
過去最高(2025年度)
持ち家率は2023年10月時点。出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」、沖縄県「令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点」。新築3LDKの家賃:おきぎん経済研究所「2025年度 県内賃料動向調査」(琉球新報 2026年8月22日)
沖縄の持ち家率は、50年前(1973年)は68.2%でしたが、下がり続けて今は4割ほどです。賃貸で暮らす人が多いぶん、「このまま借り続けるか、買うか」で迷う方も多いのではないでしょうか。
家賃には、すべての費用が含まれています
持ち家と賃貸を比べるとき、「家賃」と「ローンの返済額」だけを並べがちです。でも、賃貸の家賃には、次のような費用も含まれています。賃貸では、これらは大家さんの負担です。
持ち家では、返済とは別に自分で負担します
持ち家では、ローンの返済のほかに、修繕や設備の交換、固定資産税、保険を自分で払います。マンションなら管理費と修繕積立金もかかります。「家賃と同じ返済額だから買ったほうが得」とは、言い切れないのはこのためです。
家賃は、金利とインフレで上がりやすい
沖縄の家賃は、この20年で約24%上がりました。5年ごとにみると、+5.0%、+4.0%、+5.0%と4〜5%ずつ上がってきましたが、直近の5年(2018→2023年)は+8.4%と、いちばん大きくなっています。
沖縄県の借家の家賃(1か月あたりの平均):5年ごとの推移
5年前
から
いま借りて住んでいる世帯すべての平均で、公営住宅(平均28,312円)や古い物件も含みます。これから新しく借りる家賃は、これより高くなります(新築3LDKは平均11万円超)。出典:沖縄県「令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点」(借家・専用住宅)をもとに当事務所が作成。
直近の動き:那覇市の家賃の上昇率(前の年と比べて)
上がり方が、年々大きくなっています
出典:沖縄県「那覇市消費者物価指数」の家賃(持家の帰属家賃を除く)の前年比。2023〜2025年は年平均、2026年は8月分。いま借りている世帯の家賃の動きで、更新時の値上げなども含みます。
家賃には、大家さんの借入の返済や、修繕費・税金が含まれています。金利が上がれば借入の返済が増え、物価が上がれば修繕費や建築費が上がります。その分は、家賃に反映されやすくなります。日銀の政策金利は1.25%(2026年9月)、消費者物価は前の年より1.9%上がっています(2026年8月)。
固定金利の持ち家は、返済額が変わらない
固定金利のローンで家を買えば、毎月の返済額は返し終えるまで変わりません。家賃や物価が上がっても、住まいの費用の大部分を固定できるのは、持ち家の強みです。ただし、修繕費や税金は物価とともに上がることがあります。金利のある時代の家の買い方 ›
メリットとデメリット
賃貸
メリット
- 住み替えやすい転勤や家族の変化に合わせて、住む場所や広さを選び直せる
- 修繕や税金の心配がいらない建物の修繕・設備の交換・固定資産税は、家賃に含まれている
- 最初にかかるお金が少ない頭金や購入の諸費用がいらない
デメリット
- 家賃を払い続ける(老後も)
- 性能や間取りを自由に変えられない
- 金利や物価が上がると、家賃も上がりやすい
- ペットと暮らせる物件が限られる
- 高齢になると借りにくくなることがある
持ち家
メリット
- 理想の住まいをつくれる性能や間取りを、暮らしに合わせて自由に変えられる
- 子どもとのかけがえのない時間を過ごせる学区を決めて腰を落ち着け、家族の思い出が積み重なる
- 光熱費を下げて、快適に暮らせる断熱や設備を良くすれば、夏も冬も過ごしやすい
- 固定金利なら、返済額が変わらない家賃や物価が上がっても、住まいの費用の大部分を固定できる
- 老後の住まいの費用が軽くなるローンを返し終えれば、修繕と税金が中心に
- 家族に残せる資産になる団体信用生命保険で、万一のときもローンが残らない。沖縄の住宅地の地価は10年で約1.5倍に(沖縄の地価)
- ペットとも、気がねなく暮らせる床や足洗い場など、ペットに合わせた工夫ができる
デメリット
- 住み替えにくい
- 修繕や税金は自分で負担する
- 変動金利だと、金利が上がると返済も増える
- 最初にまとまったお金がかかる
ライフプランで見ると
メリットとデメリットは、人生のどの時期かによって入れ替わります。家族の予定と、お金のかかる時期を重ねて考えてみましょう。
20年、30年先まで、長い目で考える
住まいは、人生でいちばん長く付き合う選択です。いまの月々の金額だけで比べると、大切なことを見落とします。
- 払い終わりがあるか:家賃に終わりはありませんが、ローンは返し終える日が決まっています。
- 家族はどう変わるか:子どもの成長と独立、親のこと、自分たちの老後まで見通します。
- 性能は何十年も効き続ける:断熱や省エネの効果は、毎月の光熱費と暮らしやすさに、住み続けるかぎり表れます。
-
結婚・出産家族が増える
賃貸広い部屋へ住み替えやすい
持ち家学区を決めて、腰を落ち着けて住める
-
子育て期教育費がかかる
賃貸家賃と教育費が重なる。家賃が上がることも
持ち家子どもとのかけがえのない時間を、暮らしに合わせて整えた家で過ごせる。返済と教育費は重なるが、固定金利なら返済額は一定
-
子どもの独立夫婦2人の暮らしへ
賃貸小さな部屋に移って、家賃を下げられる
持ち家部屋をつなげて趣味の場に。リフォームで暮らしに合わせる
-
老後収入は年金が中心に
賃貸家賃を払い続ける。高齢になると借りにくいことも
持ち家返し終えれば、住まいの費用は修繕と税金が中心に
持ち家なら、ローンを返し終える時期を、退職の時期と合わせて考えておくと安心です。教育費がかかる時期は返済と重なるので、返済額が変わらない固定金利だと計画を立てやすくなります。連載の住宅ローンは「敵」ではなく、使いこなす「道具」もご覧ください。
持ち家だけにできること:理想の住まいへのアップグレード
賃貸では、間取りが合わなくても、暑い部屋や結露が気になっても、建物そのものを変えることはできません。持ち家なら、暮らしに合わせて、理想の住まいにつくり変えられます。
Your Ideal Home
理想の住まいを、自分でつくれる
家族が増えたら部屋を分け、子どもが巣立ったらひとつに。キッチンや内装を好みに整え、家事がラクになる設備を入れる。ペットのために床をすべりにくくし、足洗い場や専用のスペースをつくる。暮らしの変化に合わせて、住まいを育てていけるのは、持ち家ならではの喜びです。
工事費は、フラット35(リフォーム活用)やフラット35リノベで住宅ローンにまとめられます。ペットとの暮らしの工夫は、ペットと暮らすリフォームでご紹介しています。
そのうえで、性能も上げられます。断熱や設備を良くして、光熱費を下げながら快適さを上げることができます。
性能を上げると、家計にも体にもやさしい
沖縄の電気代は上がっています。性能の良い家なら、電気代を気にせずエアコンを使えるので、暑さを我慢せずに暮らせます。省エネ性能を証明できれば、住宅ローン控除やフラット35の金利引下げも使いやすくなります。
あなたのライフスタイルに合わせて決める
Purpose
家の目的は、人によって違う。
大切なのは「何のために住むか」
子どもとの時間を大切にしたい人、趣味やペットとの暮らしを楽しみたい人、身軽に働く場所を変えたい人。家に求めるものは、人それぞれです。目的がはっきりすれば、賃貸か持ち家か、どんな家を選ぶかは、自然に決まってきます。
どちらが正解ということはありません。いまの暮らしと、これからの予定を思い浮かべながら、当てはまるものを数えてみてください。
賃貸が合いやすい方
- 数年のうちに、転勤や転職で住む場所が変わるかもしれない
- 家族の人数や暮らし方が、まだ決まっていない
- 住みたい地域が、まだ決まっていない
- 家の手入れに、時間や手間をかけたくない
持ち家が合いやすい方
- 子どもの学区など、長く住みたい地域が決まっている
- 暮らしに合わせて、性能や間取りを変えたい
- 光熱費を下げて、夏も冬も快適に暮らしたい
- ペットと、気がねなくのびのび暮らしたい
- 老後の住まいを、早めに確保しておきたい
当てはまる数が多いほうが、いまのあなたの目的に合う住まいです。目的は、家族の成長とともに変わっていきます。ときどき見直してみてください。連載の住まいの「見えない家賃」もあわせてご覧ください。
持ち家を考え始めたら
新築だけでなく、中古住宅を買って性能を上げるリフォームという選び方もあります。費用を抑えながら、住みたい地域を選びやすくなります。
この記事に関連する質問
結局、持ち家と賃貸はどちらがお得ですか?
一概には言えません。住む年数、働き方、家族の予定、家賃や金利の動きによって変わるからです。「どちらがお得か」より「どちらが自分の暮らしに合うか」で選ぶことをおすすめします。
家賃と同じくらいの返済額なら、買ったほうが得ですか?
それだけでは比べられません。賃貸の家賃には、建物の修繕や設備の交換、固定資産税などが含まれています。持ち家では、ローンの返済とは別にこれらを自分で負担します。マンションなら管理費と修繕積立金もかかります。
賃貸でも、光熱費を下げられますか?
家電の買い替えや使い方の工夫はできますが、断熱など建物の性能は変えられません。借りる前に、広告の省エネ性能ラベルで目安の光熱費を確かめると安心です。
持ち家にするなら、新築と中古のどちらがいいですか?
どちらにも良さがあります。中古住宅を買って性能を上げるリフォームをすれば、費用を抑えながら住みたい地域を選びやすくなります。フラット35リノベなら工事費も一緒に借りられ、当初5年間の金利も下がります。
※この記事は住まい選びの一般的な考え方をまとめたもので、個別の資産運用や投資の助言ではありません。費用や制度の適用は、物件や契約の内容によって異なります。
出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(全国の持ち家住宅率)、沖縄県企画部統計課「令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点」(沖縄県の持ち家住宅率・借家の家賃とその推移)、おきぎん経済研究所「2025年度 県内賃料動向調査」(琉球新報 2026年8月22日)、沖縄県「那覇市消費者物価指数」、日本銀行(政策金利)、総務省「消費者物価指数」(2026年8月分)