2026/10/11(10/13 更新) 一級建築士 村山 創
結論
変わります。
「どう借りるか」から「何を買うか」へ。
金利が住宅ローン控除の控除率を上回り、借りるだけで得をした時代は終わりました。これからは、家の性能が、金利・控除・光熱費の3つで家計を守ります。
金利のある時代の、4つの備えを見る数字で見る、この数年の変化
日銀の政策金利
上昇2024年3月まで / 2026年9月
出典:日本銀行
変動金利(主な銀行)
上昇〜2023年頃 / 2026年10月
出典:各行の公表金利
住宅の建築費
上昇2020年度 / 2026年6月(約27%上昇)
出典:国土交通省 建設工事費デフレーター(住宅総合)
沖縄の電気代の単価
上昇2023年5月まで / 2026年11月から(1kWhあたり)
出典:沖縄電力の料金をもとに当事務所が試算
金利のない時代と、ある時代
控除と金利
金利のない時代
控除率(0.7%)が金利を上回り、借りるほど手元にお金が残った
金利のある時代
金利が控除率を上回り、借りた分だけ負担が出る
物価・建築費
金利のない時代
横ばい。待てば安く買えることもあった
金利のある時代
建築費は上がり続け、待つこと自体がコストに
借りる額
金利のない時代
借りられるだけ借りて、手元資金を残す
金利のある時代
「借りられる額」ではなく「返せる額」で考える
繰り上げ返済・頭金
金利のない時代
しないほうが合理的なことが多かった
金利のある時代
金利が高いほど、確実な効果がある選択肢に
光熱費
金利のない時代
安定していて、省エネへの投資は回収が遅く見えた
金利のある時代
電気代が上がるほど、断熱・省エネの効果が大きくなる
家の評価軸
金利のない時代
価格の安さと立地
金利のある時代
性能・耐久性・維持費まで含めた価値
いちばん大きな変化は「控除と金利の逆転」
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%が税金から戻る制度です。金利が0.3〜0.5%台だったころは、払う利息より戻る控除のほうが多く、手元資金があっても借りたほうが得になりました。
いまは、主な銀行の変動金利が年1.2〜1.4%程度、フラット35は年3.83%(いずれも2026年10月)。金利が控除率を上回り、借りた分だけ負担が出ます。「借りられる額」ではなく「返せる額」で考える時代です。
一方で、物価や建築費が上がる時代は、家という「モノ」の価値が見直される時代でもあります。だからこそ、長く価値が続く性能を持った家を選ぶことが大切になります。
変動金利の注意点:政策金利はどこまで上がる?
日銀の政策金利は、2026年9月に1.25%へ引き上げられました。市場では、利上げの最終的な到達点(ターミナルレート)を2.5%台とみる予想が出ています。一方、エコノミストへの調査では中央値が1.75%と、見方には幅があります。
政策金利:いまと、到達点の予想
出典:日本銀行、日本経済新聞「日銀政策金利、現状1.25%→到達点予想2.5%台に」(2026年9月25日)、QUICK月次調査<債券>(2026年8月25〜27日、第一生命経済研究所のレポートより)
変動金利は、政策金利が上がると、多くの銀行で同じように上がります。仮に変動金利が政策金利と同じ幅(+1.25%)で上がると、返済額は次のように変わります。
金利 年1.3%
約8.9万円
毎月の返済
金利 年2.55%
約10.8万円
毎月 約1.9万円 増える
借入3,000万円・35年・元利均等返済で、最初からその金利だった場合の比較。実際の返済額は、ローン残高や銀行ごとのルールによって変わります。
変動金利を選ぶときに、知っておきたいこと
- 返済額が変わらなくても、利息は増えている。多くの銀行には「返済額の見直しは5年ごと」「見直しても1.25倍まで」というルールがあります。急に返済が増えるのは防げますが、利息が増えた分だけ元本が減りにくくなり、最後に残高が残ることもあります。ルールのない銀行もあります。
- 上がってからの借り換えは、固定金利も上がっている。金利が上がる局面では、固定金利の水準も上がっていきます。
- 金利が2.5%程度まで上がっても続けられるか、試算しておく。教育費がかかる時期や、収入が減る時期と重ならないかも確かめます。
変動と固定のどちらがよいかは、家計の余裕と、金利の上昇をどこまで受け止められるかで決まります。当事務所からどちらかをおすすめすることはしていませんが、どちらを選んでも、家の性能で金利と控除の負担は軽くできます。
金利は「お金を受け取る日」に決まります
申込のときではなく、融資が実行される日の金利で借ります。新築は入居まで1年ほどかかり、その間にフラット35は1.89%から3.83%に上がりました(4,000万円・35年なら毎月約4.3万円の差)。住宅ローンの金利は、いつ決まる? ›
この記事でいちばん大切なこと
金利のある時代の、
4つの備え
どれも、家の性能を上げることで使える制度です。
性能で、金利を下げる
フラット35は、リノベ・中古プラス・子育てプラスなどの組合せで、当初5年間最大 年▲1.0%。銀行でも、ZEH水準を対象にした金利優遇があります(琉球銀行 当初5年固定 1.00%〜、2026年10月時点)。
何ポイント取れるかを見る ›性能で、控除を増やす
省エネ性能を証明できれば、中古住宅の住宅ローン控除は10年から13年に。借入限度額も上がり、最大控除額は最大+269.5万円。
控除10年と13年の違いを見る ›性能で、光熱費を下げる
沖縄の電気代は2026年11月から一般的な家庭で月1万円超え。給湯と冷房の効率を上げると、毎月の負担がはっきり変わります。
電気代の推移と対策を見る ›浮いたお金で、繰り上げ返済
金利の引下げで当初5年間に浮いた約104万円を繰り上げ返済に回すと、支払う利息が約214万円減る試算です(借入4,000万円の例)。
試算を見る ›沖縄では
- 県内で新しく住宅ローンを契約する人のうち、固定型を選ぶ人が3年で1割から5割に増えました(2023→2025年度)。
- 沖縄の住宅では、エネルギーの約40%が給湯、約33%が冷房。電気代の上昇が、そのまま家計に響きます。
- だからこそ、断熱や省エネ設備への投資が「インフレへの備え」になります。
- 沖縄の持家の一戸建の工事費は、10年で坪約65万円から約101万円に上がりました(2015→2025年)。沖縄の新築の建築費 ›
この記事に関連する質問
金利が上がるなら、家を買うのは待ったほうがいいですか?
待つかどうかは、家計や暮らしの事情によって決まります。ただ、住宅の建築費は2020年度から約27%上がっており、待つことにもコストがあります。いつ買うとしても、性能で金利・控除・光熱費の負担を下げる方法は使えます。
変動金利と固定金利、どちらがいいですか?
家計の余裕と、金利の上昇をどこまで受け止められるかで決まるため、当事務所からどちらかをおすすめすることはしていません。沖縄では、新しく契約する人のうち固定型を選ぶ人が3年で1割から5割に増えています。どちらを選んでも、性能による金利の引下げや控除の上乗せは使えます。
繰り上げ返済は、したほうがいいですか?
ローンの金利が控除率(0.7%)を上回る場合、控除の期間中でも、早めに元本を減らすほうが有利になることがあります。ただし、手元の資金を減らしすぎないことが大切です。
※金利は2026年10月時点の一例です。金利・控除の条件は変わることがあります。借入の判断は、金融機関や専門家とご相談ください。
出典:日本銀行(政策金利)、国土交通省「建設工事費デフレーター」(2020年度基準・住宅総合)、各金融機関の公表金利、沖縄タイムス 2026年8月19日(県内の固定型の割合)、沖縄電力の料金表